谷川の対岸一丁ほど先の阿弥陀堂境内で
どんな伝承か
二月十二日、鎮圧隊は岩原村の境に入り、休憩所を出て四、五丁進むと谷川に出た。その対岸、一丁ほど先の阿弥陀堂の境内に、数十人の男女が乱舞している様子が手に取るように見えた。皆が頭髪を振り乱し、何が何やら合点のいかぬ文句を怒鳴りながら、手を合わせて二、三尺の高さに飛び跳ねていた。記録者も『何とも目を驚かし候事』と驚嘆している。狂乱者の処分をめぐり評議したところ、大庄屋が『彼らが最も嫌うのは犬と鉄砲ゆえ、それを隠して近づくべし』と進言したという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
二つの怪奇な心霊現象(浅野和三郎・1940年(昭和15年))
『二つの怪奇な心霊現象』は、浅野和三郎が著し、心霊科学研究会が昭和十五年に発行した心霊現象の記録で、昭和二十七年に再版された。前篇は土佐国長岡郡豊永郷岩原村で村人数十人が憑きものに狂乱し、藩の役人が祈禱や鉄砲で鎮めた事件を、嘉永六年に野島通玄が記した記録から紹介する。後篇は山梨県北巨摩郡穂坂村の旧家の娘かね代に先祖横森市兵衛の霊が懸かり、盗まれた不動明王の掛軸が戻った因縁を、著者の調査と甲州訪問記を添えて述べる。