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一人だけ正気に戻らぬ女房に憑いた者が

所在地高知県長岡郡大豊町岩原
年代弘化元年2月12日
登場ある百姓の妻、野島馬三郎、惣宰
出典二つの怪奇な心霊現象

どんな伝承か

狂乱者を点検すると、ただ一人、百姓の妻だけがまだ正気に戻らなかった。憑いた者に何者かと問うと、『俺はこの女と旧い馴染で、仔細あって離別していたが、今回久しぶりに再び馴染を重ね、偕老同穴を契った上はこのまま別れる気はない。末永く二人を添い遂げさせてくれ』と、両袖を顔に当てて泣き出した。役人が芥子を庭の大木に縛った女の鼻の下で焚き、煙を吸わせる荒療治を施したが効かず、ただ狸の泣き声を出すのみで邪気退散の見込みはなかったという。

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※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません

出典の文献について

二つの怪奇な心霊現象(浅野和三郎・1940年(昭和15年))

『二つの怪奇な心霊現象』は、浅野和三郎が著し、心霊科学研究会が昭和十五年に発行した心霊現象の記録で、昭和二十七年に再版された。前篇は土佐国長岡郡豊永郷岩原村で村人数十人が憑きものに狂乱し、藩の役人が祈禱や鉄砲で鎮めた事件を、嘉永六年に野島通玄が記した記録から紹介する。後篇は山梨県北巨摩郡穂坂村の旧家の娘かね代に先祖横森市兵衛の霊が懸かり、盗まれた不動明王の掛軸が戻った因縁を、著者の調査と甲州訪問記を添えて述べる。

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