使者を装う武士に斬られた宇郷玄蕃頭
どんな伝承か
その月の二十二日の夜、九条家の諸大夫宇郷玄蕃頭のもとへ、一人の武士が九条家から急用の使いに来たと言って門をたたいた。そこは九条家の砂川の別邸で、宇郷は疑いもせずにくぐり戸を開けたが、武士の後ろには四人の仲間が控えていた。一同はとっさに門を通って奥へ押し入り、寝ていた宇郷を引き起こして別室へ連れて行くなり斬り殺し、首を取って引き揚げた。その首は槍に貫かれ、松原の東の橋詰に晒されていたという。
原典より
彼等はとつさの に門を通って から押入り、に た を引きおこして別室に伴れ往くなり斬り殺し、其の を取って引きあげてだったが、それは の に貫いて松原東橋詰に してあった。—— 奇談全集 現代篇(田中貢太郎・奇談全集) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
奇談全集 現代篇(田中貢太郎・奇談全集)
『奇談全集 現代篇』は、田中貢太郎が幕末から大正にかけての事件や奇談を読み物に仕立てた作品集である。明治十一年に相模の真土村で起きた松木騒動、大正十五年に千葉の久賀村一帯で起きた鬼熊の事件、香取郡の連続殺人、伊賀上野の破獄、京都の天誅などを、記録や関係者の話をもとに描き、松木騒動には筆者が大正六年に現地を訪ねた補遺を付す。播磨屋橋遺聞のように、筆者自身が創作と断る話も含む。