朔平門外で襲われた姉小路少将
どんな伝承か
五月二十日の夜、姉小路少将公知が退朝して朔平門のあたりまで来たところ、後をつけてきた三人の激徒に襲われた。一人がまず提灯を斬り落とし、少将は従者に持たせていた太刀を取ろうとしたが、太刀持ちの従者はそのまま逃げてしまった。少将は頭と胸に深手を負って倒れ、もう一人の従者は激徒に組みついて戦ったがこれも傷を負い、激徒は逃げ去った。姉小路家はまだ存命として届け出た。現場には激徒の履物と刀が残り、刀は薩摩の鍛冶の作で薩摩の者が使う品と分かった。持ち主とされた田中は町奉行所へ送られたその夜に自害し、数日前に祇園で盗まれた刀だったと言う者もあった。
原典より
少將は驚いて従者に持たしてあつたびを執らうとした。—— 奇談全集 現代篇(田中貢太郎・奇談全集) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
奇談全集 現代篇(田中貢太郎・奇談全集)
『奇談全集 現代篇』は、田中貢太郎が幕末から大正にかけての事件や奇談を読み物に仕立てた作品集である。明治十一年に相模の真土村で起きた松木騒動、大正十五年に千葉の久賀村一帯で起きた鬼熊の事件、香取郡の連続殺人、伊賀上野の破獄、京都の天誅などを、記録や関係者の話をもとに描き、松木騒動には筆者が大正六年に現地を訪ねた補遺を付す。播磨屋橋遺聞のように、筆者自身が創作と断る話も含む。