針打ち
どんな伝承か
兵庫県姫路市味泥生まれの友人から聞いた話。明治初年ごろ、味泥に但馬の浪人と名乗る素性の悪い男がやって来た。商人に代金を催促されると刀を差して凄み、恐れられていた。この浪人には一芸があり、口に含んだ針を水中の魚に討ち当てる技を持っていた。周囲の者が黒鯉か白鯉かと指させば、浪人は針を含んでふっと吹き、狙いたがわず針は魚の体を貫き、魚は腹を返して浮いてきた。誰も一目置く芸だったが、あまりに人物が剣呑なため相手をする者もなくなり、浪人はやがてその土地から姿を消したという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の怪談(二)(田中貢太郎・日本の怪談シリーズ)
『日本の怪談(二)』は、田中貢太郎が著した怪談・奇談の短編集である。著者の郷里である土佐の高岡郡や長岡郡の山村の話を多く含み、越中の放生津や立山、利根川の河口、館林の城下、江戸の碑文谷などを舞台に、蟹や蛇の怪、鮭の祟り、山姑、亡者宿、切支丹の処刑にまつわる怪異を物語の形で書く。「蟹の怪」から「鶏物語」まで二十八篇を収め、友人から聞いた話として語る篇もある。