旅籠屋についてきた姪の霊
どんな伝承か
奥州の某処に甚六という冷酷な百姓がいた。姉が死んで残された十二、三のフジを引きとったが、犬同然に虐げ、品物が無くなったのはフジの仕業だと言って裏の栗の木に縛りつけ、寒い冬の夜も放っておいた。夜が明けるとフジは凍え死んでおり、甚六は野原へ捨てるように埋めた。まもなく、無くなったという品物は出てきた。年が明けた元日、持仏堂が鳴り出して位牌や瓦盃が飛び、フジの姿が夢とも現ともなく夫婦の目に見えた。山伏に祈禱を頼めば須弥壇が動き錫杖が飛んで、山伏も逃げ出した。甚六が柳津の鎮守に祈願を籠めた帰り、岩坂の旅籠屋に入ると、主翁が膳を二つ持って来て、十二、三の痩せた女の子が一緒に入ったと言った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の怪談(田中貢太郎・河出文庫・明治~大正時代(編纂・出版は20世紀前半推定))
宝蔵の短刀=怨霊と祟り(日本の怪談)/幽霊の自筆・船頭の霊/義人の姿と因果応報/土佐・各地の怪異/田中貢太郎の怪談