豆腐を買いに出て消えた水夫
どんな伝承か
柔道二段で船乗りをしていた柳宗悦の兄は、部下の船員たちから親のように慕われていた。ある時、船が伊豆の下田へ入り、部下を連れて宿屋にあがって地炉を囲み酒を飲んでいると、少し前まで部下だったが最近他の船へ移った水夫がやって来た。座敷へ上げようとしたが豆腐が欲しかったので、味噌漉しを持って買いに行ってくれと頼むと、水夫は快く出て行ったきり戻らなかった。後になって、その水夫が現れた時刻はちょうど彼の乗っていた船が沈没し、彼自身が溺死した時刻だったことが分かったという。小説家里見弴の話として伝わる。
原典より
* 欺された幽霊船 (154)* 不思議な帆船 (154)* 海坊主と取組みあう (155)* 馬乗りになっていた海坊主 (156)* 海坊主 (156)* 飯坂温泉の怪異 (159)* 疫病…—— 日本怪談実話(田中貢太郎・河出文庫・1938年(昭和13年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談実話(田中貢太郎・河出文庫・1938年(昭和13年))
『日本怪談実話』は、田中貢太郎が昭和十三年に著した実話怪談集を河出文庫に収めたものである。明治以降に著者が聞き集めた怪異を報告調の短文で綴り、戦地の霊験や戦死者の知らせ、狐狸・天狗・海坊主、トンネルや自動車に現れる女、幽霊写真、狐狗狸などを扱う。元本は改造社刊の『新怪談集(実話篇)』で、冕言に始まって二百を超える小話を並べ、巻末に川奈まり子の解説を付す。