夢の通り猫いらずで死んだ愛犬
どんな伝承か
神戸の飛田信の家では、ロバートという愛犬を家族の一員のように可愛がっていた。大正十二年の正月、鼠を駆除するため猫いらずを入れた食パンを台所に置くことになり、主人は愛犬に間違いがあってはならないと注意を怠らなかった。二月のある夜、主人は愛犬がそのパンを食べて死ぬ夢を見て目を覚ます。台所へ行くとパンは三片ともそのままで、外に出るとロバートが元気に飛びついてきた。ところが裏門を開けて台所口へ引き返すと、パンが二片に減っている。犬は自分についていたのだからと思いつつも気になっていると、朝食後、庭にいたロバートの肢体がびくびくと痙攣しはじめた。手当ての甲斐なく、愛犬は夢の通り翌日、家畜病院で死んでしまった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談実話(田中貢太郎・河出文庫・1938年(昭和13年))
『日本怪談実話』は、田中貢太郎が昭和十三年に著した実話怪談集を河出文庫に収めたものである。明治以降に著者が聞き集めた怪異を報告調の短文で綴り、戦地の霊験や戦死者の知らせ、狐狸・天狗・海坊主、トンネルや自動車に現れる女、幽霊写真、狐狗狸などを扱う。元本は改造社刊の『新怪談集(実話篇)』で、冕言に始まって二百を超える小話を並べ、巻末に川奈まり子の解説を付す。