巣鴨中学前まで乗った娘
どんな伝承か
これも青山墓地にまつわる話である。夜遅く、栗塚という運転手が墓地のわきを通ると若い女が立っていて、巣鴨中学の前までと言って乗った。着いたところで女は、母を呼んできてほしいと頼む。学校の前を入った三軒長屋の真ん中だというので、助手が訪ねて主婦に話すと、妙なことを言うと首をかしげる。狐にでもつままれたかと引き返しかけると、主婦は下駄を突っかけながら、うちの娘は一昨日死んだばかりで他に娘はいないと言った。車まで来てみると女の姿はなく、運転手はハンドルを握ったまま気を失っていた。主婦は人相と着物を聞いて泣き崩れた。
原典より
* 芦屋の家へ帰る女 (380)* 月に狂う (381)* 天長節の式場 (393)* 壁の中の女の顔 (394)* 前妻の怪異 (397)* 血みどろの男の顔 (400)* 投石怪談 (40…—— 日本怪談実話(田中貢太郎・河出文庫・1938年(昭和13年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談実話(田中貢太郎・河出文庫・1938年(昭和13年))
『日本怪談実話』は、田中貢太郎が昭和十三年に著した実話怪談集を河出文庫に収めたものである。明治以降に著者が聞き集めた怪異を報告調の短文で綴り、戦地の霊験や戦死者の知らせ、狐狸・天狗・海坊主、トンネルや自動車に現れる女、幽霊写真、狐狗狸などを扱う。元本は改造社刊の『新怪談集(実話篇)』で、冕言に始まって二百を超える小話を並べ、巻末に川奈まり子の解説を付す。