山川博士の検証実験と乾板消失事件
どんな伝承か
福来と今村博士らが長尾家で川の字の念写実験を行うと、三枚重ねた乾板の中央の一枚だけに鮮明な川の字が現れ、前後の二枚は無感光であった。念写研究の妨害を企てた京大生三浦は、記者たちに「念写は詐術だ」と触れ回り、福来抜きで今村博士自身が乾板を出して実験させたが、これも見事な成績であった。やがて物理学界の大先輩山川博士が、是非を決しようと自ら出馬して長尾家に実験を申し込み、一月八日と定められた。東京大阪の記者が固唾を呑んで見守るなか行われた実験は、しかし馬鹿げた結末に終わる。念写の題は「健」の字と定められたが、実験に供された取枠には乾板が入っていなかったのである。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
心霊と神秘世界(福来友吉・1932年(昭和7年))
『心霊と神秘世界』は、文学博士福来友吉が著し、昭和七年に人文書院から発行された心霊研究と仏教思想の書である。御船千鶴子・長尾夫人・三田光一らの透視と念写をはじめ、霊の幻化、念動、物質化など国内外の心霊現象を実験記録とともに論じ、後半では自我・神秘世界・霊と生命を真言密教や華厳の教えによって説く。全五編からなり、この本文は昭和五十七年に心交社が出した復刻版で、梅原正紀・井村宏次らの「解説研究編」を付している。