鋼鉄線消失の念写事件
どんな伝承か
明治四十四年一月、丸亀で行われた長尾郁子の第二回実験は念写であった。郁子の希望で、念写の際は別室に乾板を置いたまま精神統一する方法が取られていたため、乾板をすり替えたり何らかの工作をしたりする余地があった。その対策として物理学者のグループは、写真乾板を包む黒紙に目立たぬよう細い鋼鉄線を挟んでおいた。郁子は希望どおり『正』の字を念写し、乾板には確かに『正』の字が現れたが、なぜか挟んでおいた鋼鉄線がなくなっていた。このため詐術の疑いが持たれ、第三回では乾板の取枠に印を付けるなど、さらに厳重な予防策が講じられた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
心霊と神秘世界(福来友吉・1932年(昭和7年))
『心霊と神秘世界』は、文学博士福来友吉が著し、昭和七年に人文書院から発行された心霊研究と仏教思想の書である。御船千鶴子・長尾夫人・三田光一らの透視と念写をはじめ、霊の幻化、念動、物質化など国内外の心霊現象を実験記録とともに論じ、後半では自我・神秘世界・霊と生命を真言密教や華厳の教えによって説く。全五編からなり、この本文は昭和五十七年に心交社が出した復刻版で、梅原正紀・井村宏次らの「解説研究編」を付している。