天井から自分の脱け殻を見た男
どんな伝承か
宮城県亘理郡のE・Hさんは、若いとき長崎県の炭鉱で働いていて肺結核に冒され、一九五五年に肺切除手術を受けた。当時この手術は長時間の大手術となったが、その最中か術後の最初の夜に、E・Hさんは妻の実家の板敷きの部屋の天井から二十センチほど下の空間を、蛙が泳ぐような格好で浮いていたという。下を見ると白い敷布の上に自分の脱け殻が横たわり、妻と妻の母が布団の上から取りすがって泣き、義父は腕組みをして枕元でじっと下を見ていた。「それは俺の脱け殻だ、こっちだ」と何度も声をかけたが誰も気づかない。仕方なく脱け殻の頭頂部からすっと中に入ったが、そのとき自分に脚はなく、尻尾のような先から入ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
臨死体験(立花隆)(立花隆・臨死体験・ノンフィクション)
『臨死体験(立花隆)』は、立花隆が著したノンフィクションである。一九九一年三月放送のNHKスペシャルのための取材を出発点に、日本と欧米の体験者の証言、キュブラー・ロスやムーディら研究者への聞き取り、「文藝春秋」連載中に寄せられた体験談を収める。体外離脱、光の体験、文化による体験の差、感覚遮断や脳の仕組みを章ごとに論じ、末尾で現実体験説と脳内現象説を比べたうえで、著者は基本的に脳内現象説に立つと述べる。