十二指腸閉塞で死線をさまよう
どんな伝承か
一九七六年、二十二歳の木内鶴彦は航空自衛隊百里基地で運行管理の仕事に就いていたが、人手不足で休みもなく働き続け、ある夜勤明けに胃が痙攣するような激痛に襲われて倒れた。近くの産婦人科では手に負えず、車で一時間ほどの霞ヶ浦病院へ救急車で運ばれた。病名は十二指腸が動脈に押しつぶされる珍しい閉塞で、鼻からの管で胃から黒い液が五千ccも抜け、一晩で体重が三十キロ減ったという。ひどい脱水で心臓や肝臓、腎臓まで弱り、十日ほどは点滴だけが続いた。廊下で医師が両親にあと一週間の命と告げる声も聞こえ、恐怖の末に、仕方がないと受け入れる気持ちになったと語る。
原典より
とにかく完全な脱水症状で、普通ならとっくに死んでいたよと医者がいうくらいの状態でした。—— 証言・臨死体験(立花隆・臨死体験・ノンフィクション・1996年(平成8年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
証言・臨死体験(立花隆・臨死体験・ノンフィクション・1996年(平成8年))
『証言・臨死体験』は、立花隆が文藝春秋の雑誌『クレア』に連載し、一九九六年に単行本として刊行した臨死体験の証言集である。俳優の安田伸、作家の水上勉、彗星探索家の木内鶴彦、プロレスラーの大仁田厚、映画監督の羽仁進など、病気や事故で死の淵に臨んだ二十三人の体験を、本人や家族からの聞き取りで記録する。各章は人物の略歴と前置きに続けて問答形式の談話を載せ、本人の著書や手記からの引用も交える。