心停止して体外離脱・父母の中へ
どんな伝承か
臨死体験からいったん病室で目覚めた木内鶴彦は、看護婦を呼ぼうとボタンに手を伸ばした瞬間、自分の心臓と呼吸が止まるのを感じた。意識はそのまま体を抜け出し、ベッドに残った自分の体を母が揺さぶり、ナースセンターへ駆け出していくのが見えた。立ち尽くす父に生きていると告げようと耳元に寄ると、父の体の中に入り込み、父の目線でベッドの自分を眺めていた。次に母のことを思うと、一瞬で一階のホールにいて、動転した母が公衆電話のダイヤルをうまく回せずにいたという。その間、病室では看護婦が彼の体に馬乗りになって心臓マッサージをしていた。念じるだけで場所を移れることに彼は驚いた。
原典より
おやじに、『おれは生きてるよ』といおうと思って、その耳元に近づいたら、おやじの中に入ってしまったんですね—— 証言・臨死体験(立花隆・臨死体験・ノンフィクション・1996年(平成8年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
証言・臨死体験(立花隆・臨死体験・ノンフィクション・1996年(平成8年))
『証言・臨死体験』は、立花隆が文藝春秋の雑誌『クレア』に連載し、一九九六年に単行本として刊行した臨死体験の証言集である。俳優の安田伸、作家の水上勉、彗星探索家の木内鶴彦、プロレスラーの大仁田厚、映画監督の羽仁進など、病気や事故で死の淵に臨んだ二十三人の体験を、本人や家族からの聞き取りで記録する。各章は人物の略歴と前置きに続けて問答形式の談話を載せ、本人の著書や手記からの引用も交える。