黒雲が去った屋根に大峯山の札と金幣
どんな伝承か
知多郡大井村の石橋浅太郎(当時八十四歳)が、郷土史家石黒鐘二に語った実見談。自分たちの組がお勇みを上げて西組へ帰る途中、急に黒雲が舞い下りてきて、兵右衛門方の屋根のあたりが真黒になったかと思うと、黒雲はまた天へ舞い上がっていった。不思議がった若い者が駆けつけて屋根の上を調べると、大峯山の札と金の御幣が降っていた。ありありと不思議な現象を眼のあたりに拝んだと語る。毎日の祭り騒ぎで稲刈りを忘れた者もあり、麦を蒔くのを忘れて他人のが生えてから蒔く者もあったという。
原典より
忘れもせぬ我々の組がお勇みを上げて西組へかえる途中、急に黒雲が舞い下って来て、…—— 日本神異見聞伝(笠井鎮夫・1974年(昭和49年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本神異見聞伝(笠井鎮夫・1974年(昭和49年))
『日本神異見聞伝』は、笠井鎮夫が昭和四十九年に著した霊異の見聞記である。第一篇では、大正期に大本で鎮魂帰神を受けた著者が、霊媒による死者の招霊や狐霊・竜神の託宣、霊石の発掘などを研究会での語りの口調で伝える。第二篇では、慶応三年のええじゃないかのころ尾張・遠江・駿河・美濃・丹後などで起きたお札降りを、旧家の古文書や郷土史家の便り、著者の現地調査から記録している。