湯島天神下の平田篤胤と天狗の少年寅吉
どんな伝承か
平田篤胤は文政三年三月、四十五歳で江戸湯島天神の男坂下へ移り住んだ。神田明神下に火が出たとき、本郷壱岐殿坂に住む門人岡本保孝が案じて駆けつけると、篤胤は衣服を改めて自宅の神前に立ち、鎮火の祝詞を高々と唱え続け、見舞いに来た弟子を顧みもしなかったという。同じ年の十月一日、屋代弘賢に誘われて下谷長者町の薬種商長崎屋を訪ね、天狗にさらわれてその弟子になっているという少年寅吉に初めて会う。以後篤胤は、少年の語る常陸岩間山の山人や天狗たちの暮らしぶりを、学者らしい真剣さで根掘り葉掘り聞き出した。
原典より
平田篤胤は驚くべき博覧強記の学者であると同時に大の敬神家であった。—— 近代日本霊異実録(笠井鎮夫・霊異・神憑り実録・1966年(昭和41年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
近代日本霊異実録(笠井鎮夫・霊異・神憑り実録・1966年(昭和41年))
『近代日本霊異実録』は、笠井鎮夫が著して昭和四十一年に昭森社から初版を出した、幕末から近代の神憑りと霊異の記録で、ここに収めるのは昭和四十八年に山雅房から出た複刻版である。金光教・黒住教・天理教・大本の教祖の神憑り、井上正鉄の求道、宮地常磐・堅磐父子や河野至道の神仙譚、天狗の弟子寅吉の話、長南年恵の奇跡などを、手記・写本・旧著を引いて語る。全十二録からなり、第一録には金光教に入信した著者の父の手記を収め、巻末にあとがきと著者略歴を置く。