御神酒で息を吹き返した幼子
どんな伝承か
明治三十年の七月、岡山県上道郡富山村福泊の笠井家では、幼い三男の鎮夫が重い脳膜炎にかかり、父吉夫らが天地金乃神に祈って持ち直させていた。ところが同じ年の十二月二十三日、午前三時半ごろ、鎮夫は急に気を失い、家の者はもう生き返るまいと思った。吉夫はすぐ神前に供えてあった御神酒の徳利をいただいて寝床へ走り、妻の龍に渡して子の口へ吹き込ませた。酒がのどを通ったとたん、鎮夫は泣き声をあげて息を吹き返したという。続いて久山・松岡の二人の医師を招いて薬を与えると、夜明けには食べ物をほしがるまでに回復した。
原典より
十二月廿三日午前三時卅分突然気絶シ、最早蘇生ノ見込ミナキカト思ハレタリ。—— 近代日本霊異実録(笠井鎮夫・霊異・神憑り実録・1966年(昭和41年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
近代日本霊異実録(笠井鎮夫・霊異・神憑り実録・1966年(昭和41年))
『近代日本霊異実録』は、笠井鎮夫が著して昭和四十一年に昭森社から初版を出した、幕末から近代の神憑りと霊異の記録で、ここに収めるのは昭和四十八年に山雅房から出た複刻版である。金光教・黒住教・天理教・大本の教祖の神憑り、井上正鉄の求道、宮地常磐・堅磐父子や河野至道の神仙譚、天狗の弟子寅吉の話、長南年恵の奇跡などを、手記・写本・旧著を引いて語る。全十二録からなり、第一録には金光教に入信した著者の父の手記を収め、巻末にあとがきと著者略歴を置く。