聴聞者一人の高座に集う八百万の神
どんな伝承か
黒住宗忠が六十八歳のときに入門した竹内来造が、ある月の集会日に大元へ参詣した。その日はどうしたわけか他に聴聞の者が誰もおらず、宗忠と竹内の二人きりだったので、まず竹内が前講を勤めた。続いて宗忠はいつもどおり、堂内に響きわたるさわやかな声で長々と講釈を行う。終わったあと竹内が、先生の御講釈を自分ひとりで聴くとはこれほど有難いことはないと恐縮して述べると、宗忠は姿勢を正し、天照大神の御講釈にはかたじけなくも八百万の神々が集われるのに、あなた一人だと思うのかとたしなめた。竹内は冷水を浴びたように感じ、その場に平伏したという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
近代日本霊異実録(笠井鎮夫・霊異・神憑り実録・1966年(昭和41年))
『近代日本霊異実録』は、笠井鎮夫が著して昭和四十一年に昭森社から初版を出した、幕末から近代の神憑りと霊異の記録で、ここに収めるのは昭和四十八年に山雅房から出た複刻版である。金光教・黒住教・天理教・大本の教祖の神憑り、井上正鉄の求道、宮地常磐・堅磐父子や河野至道の神仙譚、天狗の弟子寅吉の話、長南年恵の奇跡などを、手記・写本・旧著を引いて語る。全十二録からなり、第一録には金光教に入信した著者の父の手記を収め、巻末にあとがきと著者略歴を置く。