代参の時尾が拝した大御神の尊姿
どんな伝承か
黒住宗忠の高弟の一人、時尾宗道は、ある年の五月十五日、師の家で行われた御日待祭の折に、伊勢大神宮への代参を命じられた。宗忠はいったん見送ってから門前に出直して呼び止め、天照大神にお目通りして、直々のお言葉を土産に持ち帰ってほしいと頼んだ。同じ月の二十八日、身を清めて神宮に参った時尾は、いくら祈っても何の兆しも得られなかったが、なおも祈り続けるうちに古歌が一首心に浮かび、まどろむような心地の中で神殿の扉の開く音を聞いた。見上げると扉が少し開き、大御神の姿がありありと現れ、声をあげかけたところで我に返ったという。報告を聞いた宗忠は低い声で有難しと繰り返したと伝わる。
原典より
ふと御神殿の扉の開く音にハッと頭を上げて、恐る恐る見上げ奉れば、扉少し開き、大御神の尊姿ありありと御出現あらせらる。—— 近代日本霊異実録(笠井鎮夫・霊異・神憑り実録・1966年(昭和41年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
近代日本霊異実録(笠井鎮夫・霊異・神憑り実録・1966年(昭和41年))
『近代日本霊異実録』は、笠井鎮夫が著して昭和四十一年に昭森社から初版を出した、幕末から近代の神憑りと霊異の記録で、ここに収めるのは昭和四十八年に山雅房から出た複刻版である。金光教・黒住教・天理教・大本の教祖の神憑り、井上正鉄の求道、宮地常磐・堅磐父子や河野至道の神仙譚、天狗の弟子寅吉の話、長南年恵の奇跡などを、手記・写本・旧著を引いて語る。全十二録からなり、第一録には金光教に入信した著者の父の手記を収め、巻末にあとがきと著者略歴を置く。