天照大神の御開運を祈った黒住宗忠の参宮
どんな伝承か
黒住宗忠は生涯にたびたび伊勢へ参宮した。ある年の参宮で泊まった先の御師、中川氏が、毎度遠い道をはるばるお参りになるが、いったい何を祈っておられるのかと尋ねた。宗忠の答えは、ほかに祈ることは何もない、ただ天照大神のご開運を祈るばかりだ、というものだった。別の折には門人に、天地のお栄えを祈ると語ったこともあり、意味するところは同じだという。自分の願いではなく神そのものの栄えを祈るというこの言葉を、著者は宗忠の信仰が行き着いた姿として紹介し、イエスが天の父の御心の成ることを祈ったのになぞらえている。
原典より
『私は外に祈ることはございません。ただただ天照大神の御開運を祈り奉るばかりでございます』—— 近代日本霊異実録(笠井鎮夫・霊異・神憑り実録・1966年(昭和41年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
近代日本霊異実録(笠井鎮夫・霊異・神憑り実録・1966年(昭和41年))
『近代日本霊異実録』は、笠井鎮夫が著して昭和四十一年に昭森社から初版を出した、幕末から近代の神憑りと霊異の記録で、ここに収めるのは昭和四十八年に山雅房から出た複刻版である。金光教・黒住教・天理教・大本の教祖の神憑り、井上正鉄の求道、宮地常磐・堅磐父子や河野至道の神仙譚、天狗の弟子寅吉の話、長南年恵の奇跡などを、手記・写本・旧著を引いて語る。全十二録からなり、第一録には金光教に入信した著者の父の手記を収め、巻末にあとがきと著者略歴を置く。