一家三人を同時に襲った病
どんな伝承か
天保九年十月二十三日夜の四ツ時(午後十時)、大和国庄屋敷村(現奈良県天理市三島)の中山家で騒動が起こった。平素は丈夫な主婦みきが急に腰に激痛を覚え、夫善兵衛も両眼が痛くなり、一年前から足を病んでいた長男秀司(十八歳)も同じ時刻にまた激しい足痛を起こして泣かんばかりに叫び出した。一家三人が一時に病気にかかったので、何神かの祟りではないかと恐れ、憂愁の黒雲に閉ざされた。近所へ亥の子の祝いに来ていた、長滝村の山伏市兵衛に祈祷を頼んだ。
原典より
家中のものが三人まで揃いも揃って一時に病気にかかるとは、何神かの祟りやあろまいか。—— 近代日本霊異実録(笠井鎮夫・霊異・神憑り実録・1966年(昭和41年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
近代日本霊異実録(笠井鎮夫・霊異・神憑り実録・1966年(昭和41年))
『近代日本霊異実録』は、笠井鎮夫が著して昭和四十一年に昭森社から初版を出した、幕末から近代の神憑りと霊異の記録で、ここに収めるのは昭和四十八年に山雅房から出た複刻版である。金光教・黒住教・天理教・大本の教祖の神憑り、井上正鉄の求道、宮地常磐・堅磐父子や河野至道の神仙譚、天狗の弟子寅吉の話、長南年恵の奇跡などを、手記・写本・旧著を引いて語る。全十二録からなり、第一録には金光教に入信した著者の父の手記を収め、巻末にあとがきと著者略歴を置く。