閉じた宮に入り八幡の夫婦神を拝む
どんな伝承か
二十六日、鎮守八幡大神から侍女が来て、今日は八幡大神のもとへ参れと呼んだ。春は妹の亀と下女を連れて参り、閉まったままの宮の戸を何の障りもなく通り抜け、亀を連れたまま宮の内へ入って、松葉色の袍を着た四十ばかりの八幡大神と、美しい装束の后神を拝んだ。二神から鞠のように大きな柿を一つ賜り、持ち帰ろうとするとここで食べよと言われ、妹と分けて食べると、この世のものとは思えない美味だった。大神は二十八日に出雲大社へ発ち、途中で春の家に寄ると告げた。下女の目には、二人が宮の前で少し拝んでいただけに見えたという。
原典より
さて女男二柱神ともに春女に色々と御はなしありて、鞠の如く大なる柿を一つ賜はりし故、春女持帰て家内の者にも給させんと思ふに、其柿は一つなれども家まで持帰らず、其処にてたべよと詔玉ふ故、…—— 近代日本霊異実録(笠井鎮夫・霊異・神憑り実録・1966年(昭和41年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
近代日本霊異実録(笠井鎮夫・霊異・神憑り実録・1966年(昭和41年))
『近代日本霊異実録』は、笠井鎮夫が著して昭和四十一年に昭森社から初版を出した、幕末から近代の神憑りと霊異の記録で、ここに収めるのは昭和四十八年に山雅房から出た複刻版である。金光教・黒住教・天理教・大本の教祖の神憑り、井上正鉄の求道、宮地常磐・堅磐父子や河野至道の神仙譚、天狗の弟子寅吉の話、長南年恵の奇跡などを、手記・写本・旧著を引いて語る。全十二録からなり、第一録には金光教に入信した著者の父の手記を収め、巻末にあとがきと著者略歴を置く。