重源が築いたと伝わる野谷の石風呂
どんな伝承か
山口市徳地はかつて石風呂の多い土地で、消えたものを含め三十三基が確かめられている。徳地野谷字四古谷の山中にある「野谷の石風呂」は現存最古の石風呂とされ、昭和十年に国の史跡となった。四古谷川右岸にそびえる巨岩の下部をくり抜いたもので、奥行き二・六メートルほどの室に、熱を逃がさぬよう高さ八十センチ、幅四十センチほどの小さな入り口が開く。鎌倉初期、東大寺再建の大勧進として木材を求めて徳地に滞在した俊乗房重源が、杣出しの人夫のけがや病の治療、休養のために築いたと伝わる。確証はないが、この山中に大勢が暮らしたのはその時期だけで、上流には風呂元・風呂ノ浴の地名も残る。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
村の奇譚 ― 里の遺風(筒井功・民俗・地誌・2018年(平成30年))
『村の奇譚 ― 里の遺風』は、民俗研究者の筒井功が平成三十年に著した民俗探訪記である。修験の里の石室、石風呂と焼き石湯、山中の贋金づくり、箕作りの集団や天幕部落、岩窟に暮らした非定住民、猿と猟師、氷室と風穴、産屋、墓制、安倍晴明の墓、狐憑きと犬神など、各地の村に残る習俗と伝承を、聞き取りと文献の両面からたどる。全十三章で、昭和三十年前後の高知市での見聞から説き起こし、「おわりに」では別の出版社で刊行が見送られた経緯を記す。