罠を掛ける九十一歳の猟師をクマが襲う
どんな伝承か
群馬県みなかみ町相俣富士新田に生まれた猟師、石倉篤太郎は、九〇歳を過ぎても役場の委託でイノシシの罠を仕掛けていた。平成二十六年の夏、みなかみ町小仁田の畑へ罠を掛けに行ったときのことである。輪になった罠を掛けている最中、どこかでハァー、ハァーというクマの息がした。耳が遠くなって方角が分からず、きょろきょろしているうちに、いきなりやられてしまった。そばの木の上に乗っていたらしい。顔の右半分と右腕をかじられ、一ヵ月ほど入院し、これをしおに猟をやめた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
村の奇譚 ― 里の遺風(筒井功・民俗・地誌・2018年(平成30年))
『村の奇譚 ― 里の遺風』は、民俗研究者の筒井功が平成三十年に著した民俗探訪記である。修験の里の石室、石風呂と焼き石湯、山中の贋金づくり、箕作りの集団や天幕部落、岩窟に暮らした非定住民、猿と猟師、氷室と風穴、産屋、墓制、安倍晴明の墓、狐憑きと犬神など、各地の村に残る習俗と伝承を、聞き取りと文献の両面からたどる。全十三章で、昭和三十年前後の高知市での見聞から説き起こし、「おわりに」では別の出版社で刊行が見送られた経緯を記す。