清博士に並ぶ晴明の墓の二基の五輪塔
どんな伝承か
御嶽山の東方、標高九八〇メートル前後の山間にある長野県木曽町新開の清博士には、安倍晴明の墓とされる二基の五輪塔が門柱のように並んでいる。晴明の墓所と伝える場所は各地に十か所ほどあるが、晴明に由来する地名が付いた例はほかにないという。ハカセは民間陰陽師の別称であり蔑称でもあった。清博士は明治六年まで「清墓士」と書き、僧侶のいない山村で毛坊主が葬送の世話に当たっていたことに由来するとみられる。現在は数戸の小集落だが、晴明の墓の所在地であることを積極的にうたい、そばに安倍の晴明・駒見公苑という小公園も作られている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
村の奇譚 ― 里の遺風(筒井功・民俗・地誌・2018年(平成30年))
『村の奇譚 ― 里の遺風』は、民俗研究者の筒井功が平成三十年に著した民俗探訪記である。修験の里の石室、石風呂と焼き石湯、山中の贋金づくり、箕作りの集団や天幕部落、岩窟に暮らした非定住民、猿と猟師、氷室と風穴、産屋、墓制、安倍晴明の墓、狐憑きと犬神など、各地の村に残る習俗と伝承を、聞き取りと文献の両面からたどる。全十三章で、昭和三十年前後の高知市での見聞から説き起こし、「おわりに」では別の出版社で刊行が見送られた経緯を記す。