有峰の酔いどれトロッコ部隊
どんな伝承か
北アルプスの西側にある有峰はむかしの鉱山跡で、当時は秘境に属していた。富山から有峰を通って黒部の源流地域へ入ろうと、そろって酒好きの四人が立山山麓へやって来て米を現地調達し、交渉を引き受けてくれた飲み屋のオバサンへの礼を兼ねてビールを飲んだ。ところが背中からジリジリ照らされる草いきれの中を二〇〇メートルばかり直登してトロッコ道へ登ったときには汗が滝のように出て、完全にのびてしまった。先を見ると軌道の上にトロッコが一台置いてあったので荷物を載せ、足で蹴飛ばしながら進んで四時間の行程を楽しくすませた。登りの前に飲む酒は山に登る気持ちまでなくすと著者は結ぶ。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
山とお化けと自然界(西丸震哉・山岳・怪異エッセイ・1990年(平成2年))
『山とお化けと自然界』は、西丸震哉が旧著三冊を編み直し、一九九〇年に文庫版あとがきを付けた随筆集である。山や湿原の探検、チョウや小動物とのつき合い、酒の話とともに、横尾谷の岩小屋で出会った幽霊、木曾御岳の人魂、亡兄との交信、テレパシー、呪い殺しの実験、雨やみの術など、著者自身の体験した怪異をつづる。生き物・酒・山・兄との交信の四部からなり、あとがきに『未知への足入れ』『山だ原始人だ幽霊だ』『山の動物誌』を元にしたと記す。