北御室地震(アルコールで心臓が止まる)
どんな伝承か
著者は農大山岳部の卒業生を一人連れて鳳凰山に入り、新雪の深いドンドコ沢で手間取って、夜八時ごろ柱だけが残る北御室小屋跡に着いた。手製の一人用テントに二人でもぐり込み、雪を溶かした湯で局方アルコールを割って飲むと、疲れた体にはこの上なくうまかった。ところが三十分ほどすると心臓が脈拍二百の速さで打ち出し、ときどき止まるようになった。やがて寝たまま体が跳ねる発作に襲われ、連れは泣きながら押さえ続けた。著者はこれを北御室地震と呼んだという。
原典より
これは寝たままで体がポンポンはずむという驚くべき運動で、彼氏が私を上から押さえつけてくれるのすら、あまり役立たぬくらい強力なものだった。—— 山とお化けと自然界(西丸震哉・山岳・怪異エッセイ・1990年(平成2年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
山とお化けと自然界(西丸震哉・山岳・怪異エッセイ・1990年(平成2年))
『山とお化けと自然界』は、西丸震哉が旧著三冊と雑誌の一篇「ワシは安禄山」を編み直し、一九九〇年に文庫版あとがきを付けた随筆集である。「自然界はもちつもたれつ」「酒」「山」「兄との交信」の四部に、チョウや小動物、山や湿原の探検、酒と温泉の話とともに、横尾谷の岩小屋の幽霊、釜石の幽霊、木曾御岳の人魂、呪い殺しの実験、雨やみの術など著者自身の怪異体験をつづる。あとがきに『未知への足入れ』『山だ原始人だ幽霊だ』『山の動物誌』を元にしたと記す。