天の声で開いた普茶料理の一休庵
どんな伝承か
京都の高台寺南門前にある普茶料理の店「一休庵」は、明治二十二年に下京区の書店に生まれた小山滝之助が開いた。父の急死で学校をやめ、東京の博文館で修業してから絵葉書屋を始めたが、大正天皇即位の記念の品が昭憲皇太后の崩御で紙くずになり、家も店も失った。大正五年七月、首つりの名所といわれた寂しい一角の安いあばら家に越すと、その夜、近くに普茶料理の店がないのは寂しいという話し声を耳にし、天の声と感じて店を始めた。坊主頭の夫と尼僧姿の妻が出す料理が評判を呼び、のちに大黒天のお告げで手に入れた五条大橋の土地にも店を出して財をなしたという。
原典より
「この辺はお寺が随分あるのに、普茶料理がないのは寂しいわね」という話し声が聞えてくる。—— 現代の怪奇-日本列島のミステリー地帯(鈴江淳也・1970年(昭和45年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代の怪奇-日本列島のミステリー地帯(鈴江淳也・1970年(昭和45年))
『現代の怪奇――日本列島のミステリー地帯』は、鈴江淳也が前著『日本の奇談』に続けてまとめた、現代の超常現象と奇談のレポートである。桑名の「天狗の初さん」、新幹線の亡霊、京都のタクシーに乗る幽霊客、人魂、原因の知れない奇病、念写と三田光一の透視などを、著者の取材・面談と、大正の新聞から昭和四十年代の週刊誌までの記事で集めて収める。五つの部に分け、あとがきは昭和四十五年三月の日付で、巻末に機関誌などを入手できる団体・研究家の一覧を付す。