切石にしゃがむ植木屋の霊と幽霊坂
どんな伝承か
著者の家から三百メートルほど離れた所に、幽霊坂という坂があった。高さは二十メートルほどだが、周囲は古い邸ばかりで樹木が暗く茂り、昼でも人通りがない。坂の中途の桐岡邸には毎年、年老いた植木屋が入っていたが、ある日の夕方、大木から落ちて溝端の切石で後頭部を割り死んだ。数日後から老いた乞食の女が切石の前で長く念仏をあげ、握飯を三つ入れた竹皮包みを置いていくようになる。やがて夕暮れになると植木屋がそこにしゃがんでいると噂が立った。長勝寺の和尚は霊に違いないと言い、念仏を唱えて打てと数珠を貸した。著者が書生と行くと、細い腕で突っかい棒をして泣く植木屋がおり、数珠を投げつけて逃げ帰った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
霊界五十年(長田幹彦)
『霊界五十年』は、長田幹彦が自らの心霊体験を一人称でつづった随筆集である。霊媒亀井三郎の実験に立ち会った話に始まり、大正十四年に東京中央放送局で見た変死した技師の霊、自殺者の霊、神隠し、心霊写真、死者の霊との交わりなど、長年にわたって見聞きした出来事を語る。「亀井霊媒の実験」「放送局の幽霊」「霊界夜話」「幽霊のキスマーク」などの短い章を連ね、心霊研究の知人や医師との問答を多く交える。