小南宅に現れた背広の山川
どんな伝承か
すゑ子が祈禱を受けていた世田ヶ谷の小南宅では、死者を呼び戻す行が行われた。薬草らしきものを焚くと良い匂いが立ちこめ、生前のままの背広にステッキを持った山川が現れる。縁端の外れの段に長いこと腰かけ、煙草をふかしながら、一週間に一度はお前に逢っているのだと笑った。幼くして死んだ子の親雄にも逢っており、こないだは足を怪我していたと言う。そして、今度の病気は跡形もなく治るが、四、五年のうちに別の場所へ現れ、それが命取りになると告げた。山川はそれきり現れず、親雄はその後も二、三度姿を見せた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
霊界五十年(長田幹彦)
『霊界五十年』は、長田幹彦が自らの心霊体験を一人称でつづった随筆集である。霊媒亀井三郎の実験に立ち会った話に始まり、大正十四年に東京中央放送局で見た変死した技師の霊、自殺者の霊、神隠し、心霊写真、死者の霊との交わりなど、長年にわたって見聞きした出来事を語る。「亀井霊媒の実験」「放送局の幽霊」「霊界夜話」「幽霊のキスマーク」などの短い章を連ね、心霊研究の知人や医師との問答を多く交える。