兄新五郎に生き写しの赤子
どんな伝承か
『真景累ヶ淵』で、新吉が裕福な三蔵の家の娘お累に深く慕われ、婿に入ってからの話。その家は新吉が累ヶ淵で殺したお久ゆかりの家で、新吉は因縁の深さにおののき改心を誓う。ところがお累はただ一夜で身ごもり、生まれた男の子は鼻が妙に高く、痩せて骨と皮ばかりの気味の悪い赤子で、新吉の夢に出た兄新五郎に生き写しだった。夢の新五郎は、三蔵はお園殺しを訴え出た憎い男だ、その家と縁を結ぶな、自分と盗賊になれと迫り、拒む新吉と泥田で組み合ったすえ喉笛を刺す。新吉は、なんと情けない兄さんと叫んだところで悪夢から覚めた。
原典より
それは、新吉の夢にあらわれた兄新五郎の顔に生き写しの、気味の悪い子供であった。—— 日本の幽霊たち ― 怨念の系譜(阿部正路) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の幽霊たち ― 怨念の系譜(阿部正路)
『日本の幽霊たち――怨念の系譜』は、阿部正路が書きおろした日本文学の幽霊論で、刊行は日貿出版社が手がけた。『竹取物語』『源氏物語』『平家物語』などの物語、『日本霊異記』から『遠野物語』『聴耳草紙』に至る説話、能と歌舞伎、さらに三遊亭円朝・泉鏡花・森鴎外・小泉八雲らの近代の作品に現れる幽霊をたどり、怨念の系譜として読み解く。第一章で幽霊の時・季節・姿・場・目的を論じ、終章で稲生屋敷の物怪や百鬼夜行など幽霊の周辺に及ぶ。