築地の運河に棲む川獺の怪異
どんな伝承か
田中貢太郎の四巻本『日本怪談集』に収められた「築地の川獺」の一節である。田中は、小泉八雲の書いた怪談に赤坂へ出る目も鼻もないのっぺらぼうの話があることを引きながら、築地をめぐる運河の水にも数多くの川獺が棲んでいて、そこにも川獺の起こす怪異が伝わっていたと記している。八雲の系譜を明らかに引く書きぶりで、著者はここに、八雲から貢太郎へと受け継がれた日本の幽霊たちの再発見の流れを見ている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の幽霊たち ― 怨念の系譜(阿部正路)
『日本の幽霊たち――怨念の系譜』は、阿部正路が書きおろした日本文学の幽霊論で、刊行は日貿出版社が手がけた。『竹取物語』『源氏物語』『平家物語』などの物語、『日本霊異記』から『遠野物語』『聴耳草紙』に至る説話、能と歌舞伎、さらに三遊亭円朝・泉鏡花・森鴎外・小泉八雲らの近代の作品に現れる幽霊をたどり、怨念の系譜として読み解く。第一章で幽霊の時・季節・姿・場・目的を論じ、終章で稲生屋敷の物怪や百鬼夜行など幽霊の周辺に及ぶ。