麻布の聯隊における亡霊の靴音
どんな伝承か
麻布の某聯隊では、毎年決まった月日の夜になると、一中隊ほどの兵士の靴音が一斉にどっと響きあがるという風聞があった。その夜は、かつて同聯隊から出陣した一中隊が、日露の激戦のさなか満洲の野で全滅した晩にあたるという。それゆえ、戦死した兵の亡霊が怨みを呑んで、いまなお兵を練っているのであろうと想像されていた。著者は、軍陣のあいだにはこうした不可思議な霊怪現象がしばしば認められるとし、寺院に住む人々が絶えず新仏の訪れに夢を驚かされるのに似ていると述べている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
心霊哲学の現状(高橋五郎・1919年(大正8年))
『心霊哲学の現状』は、高橋五郎が大正八年に著した心霊研究の概説書である。英国のロッジが戦死した子レイモンドの霊と交わした冥界通信をはじめ、欧米の交霊術と霊媒の実例を訳して紹介し、日本の催眠術と千里眼の流行、御船千鶴子・長尾郁子の事件、霊光や念写までを論じる。篇と章に分け、心霊哲学とキリスト教、クリスチャン・サイエンス、淘宮術との関係や、太霊道など国内の霊術諸派も取り上げ、ところどころに評註を添える。