落ちても無傷だった天狗巌
どんな伝承か
因幡の網代浦には天狗巌と呼ばれる岩がある。この浦は奇岩怪石が海から突き出して屏風のように立ち並ぶ、山陰随一の景勝地だが、誰も雅な名を付けていないと聞いて、著者は仙巌浦と名付けた。その中に百丈もの断崖があり、ある者が誤ってその岩の上から海へ転落したが、少しの怪我もなく無事だった。人々はこれを天狗が助けたのだと信じ、その岩を天狗巌と呼ぶようになったという。
原典より
この巖頭より誤りて海中に落下したものが何らの負傷もせず、全く無事であった。—— 迷信の諸相・宗教の真相(井上円了・1916年(大正5年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
迷信の諸相・宗教の真相(井上円了・1916年(大正5年))
『迷信の諸相・宗教の真相』は、井上円了が大正五年に刊行した『迷信と宗教』を、新しい題を付け現代の表記に改めて翻刻した本である。琉球・伊豆七島・壱岐対馬から北海道まで、著者が各地を巡回して見聞した犬神・人狐・河童・狐憑きなどの迷信と、怪火・天狗・幽霊・鬼門・卜筮・家相・禁厭など全国共通の迷信を挙げる。迷信の利害と原因を論じたのち宗教の真相を説き、余論に妖怪学の短編、附録に幽霊鬼神と霊魂不滅をめぐる論を収める。