外れようのない易者の答え
どんな伝承か
卜筮がよく当たるという話ばかり世に広まるのは、外れた者は恥じて黙り、当たった者だけが言いふらすからだと著者は言う。そのうえで『視聴雑録』の話を引く。昔、江戸の浅草に住む商人が金を失くし、易者を呼んで占わせた。易者は、この金を外に探してはならない、おそらく家の中にあるだろう、家じゅうを探して見つからなければ家の外を探せ、と答えた。どちらに転んでも外れようのない答えであり、卜筮がよく当たるというのはこの類だろうと著者は皮肉っている。
原典より
『視聴雑録』と題する書中に、「むかし江戸浅草に住める商人某が黄金を失い、筮者を招きて占わしめしに、筮者いわく、この金は必ず外に求むべからず。—— 迷信の諸相・宗教の真相(井上円了・1916年(大正5年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
迷信の諸相・宗教の真相(井上円了・1916年(大正5年))
『迷信の諸相・宗教の真相』は、井上円了が大正五年に刊行した『迷信と宗教』を、新しい題を付け現代の表記に改めて翻刻した本である。琉球・伊豆七島・壱岐対馬から北海道まで、著者が各地を巡回して見聞した犬神・人狐・河童・狐憑きなどの迷信と、怪火・天狗・幽霊・鬼門・卜筮・家相・禁厭など全国共通の迷信を挙げる。迷信の利害と原因を論じたのち宗教の真相を説き、余論に妖怪学の短編、附録に幽霊鬼神と霊魂不滅をめぐる論を収める。