吉川藩の米倉に出る白い巳さん
どんな伝承か
同じ『大阪新報』の記事には、天王寺の動物園で飼っている白蛇の話もある。その白蛇は山口県の吉川藩の米倉に出る本物の「巳さん」で、目が赤く全身が真っ白だという。土地の者はこの蛇を捕まえも殺しもしないが、ただ一人、酒五升と十円の礼で捕まえてくれる男がいた。広島市の藤岡という者がこの男に頼んで五匹だけ捕ってもらい、各地を見せて回って一家の暮らしを立てていた。それを動物園が買い取ったが、先方は祀ってくれるなら譲ると言い張り、園はずいぶん手を焼いたという。
原典より
あの白蛇は山口県の吉川藩のお米倉に出来る本統の巳さんで、名古屋辺の人造白蛇でない。—— 迷信の諸相・宗教の真相(井上円了・1916年(大正5年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
迷信の諸相・宗教の真相(井上円了・1916年(大正5年))
『迷信の諸相・宗教の真相』は、井上円了が大正五年に刊行した『迷信と宗教』を、新しい題を付け現代の表記に改めて翻刻した本である。琉球・伊豆七島・壱岐対馬から北海道まで、著者が各地を巡回して見聞した犬神・人狐・河童・狐憑きなどの迷信と、怪火・天狗・幽霊・鬼門・卜筮・家相・禁厭など全国共通の迷信を挙げる。迷信の利害と原因を論じたのち宗教の真相を説き、余論に妖怪学の短編、附録に幽霊鬼神と霊魂不滅をめぐる論を収める。