迷信撲滅の指令と丸亀への訓戒
どんな伝承か
郁子の死後、優れた能力者は現れず、福来は焦りを深めた。平田元吉は『心霊の秘密』で、山川博士が能力者を慎重に扱わず実験を壊したと批判した。明治四四年一月の新聞には、実験中は人格を離れて機械と見なすと郁子に宣言したという山川の談話が載っている。著者は、帝国大学令が国家の必要を優先すると定めていたことから、理学者たちには上層部の迷信撲滅の意図が働いていたのではないかと推測する。実際、実験の後、丸亀中学校の教諭は千里眼に関わるなと訓戒を受け、長尾判事も司法官として面白くないと注意されたと伝えられる。
原典より
長尾邸実験のあと、それに関係した丸亀中学校や教諭は其の筋より「教育者の身を以って千里眼問題などに関係してはよくない」と訓戒をうけたり、…—— 霊術家の饗宴(井村宏次・井村宏次・霊術研究・1983年(昭和58年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
霊術家の饗宴(井村宏次・井村宏次・霊術研究・1983年(昭和58年))
『霊術家の饗宴』は、井村宏次が一九八三年に著した近代日本の霊術家の歴史である。明治から昭和初めにかけて、気合術・催眠術・霊子術などで民衆の病や苦しみを救おうとした霊術家たちの運動を、当時の新聞記事や刊行物、関係者の家族への取材をもとにたどる。プロローグと六章、エピローグからなり、浜口熊嶽、桑原天然、福来友吉と千里眼事件、太霊道の田中守平を章ごとに取りあげ、霊術ブームと取締法による衰退までを描く。