新築火葬場の釜入り式に殺到する老人
どんな伝承か
『火葬場のカマに入ると中風にならぬ』『火入れ前の焼却炉で釜入りの式をしてもらうと中風にならぬ』という俗信がある。著者がこれを知ったのは、山口県下関市の火葬場が新築されたときのニュースであった。一昨年の春、下関市の藤ガ谷火葬場ができあがって完工式を挙行した三月二四日、数十人の老人たちが人焼釜の前に押しよせて順番を争ったという。死体をのせて焼却炉に押しこむ押し車の上に仰臥したり正坐したりし、手に数珠をかけてナムアミダブツを唱え、坊さんに引導を渡してもらうものらしい。いくつかのテレビ局がこの騒ぎを電波にのせて紹介した。
原典より
数十人の老人たちが人焼釜の前に押しよせて順番を争ったという。—— 現代の迷信(今野圓輔・現代教養文庫・1961年(昭和36年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代の迷信(今野圓輔・現代教養文庫・1961年(昭和36年))
『現代の迷信』は、今野圓輔が昭和三十六年に著した、現代の俗信を一般の読者に向けて説いた読み物である。昭和三十年代の新聞・雑誌の報道や聞き書きを主な材料に、縁起かつぎ、前兆・占い・禁忌・まじない・願掛け、憑きもの落としの殺人や新興宗教の騒ぎまでを全国から拾い集めている。「現状」「過誤と真実」「その背景」「迷信論」の四部から成り、巻末に読者の問いに答える迷信身の上相談を付ける。