流感よけの久松留守の貼札
どんな伝承か
大正七年、大阪で流行した流行性感冒には「お染風」という異名がつけられた。歌舞伎の「お染久松」にちなみ、恋人の久松が留守の家なら用がなく入ってこないだろうと考えた大阪市内の頭の良い男が、「久松留守」と書いた貼札を家の入り口に掲げ、疫病よけとしたという。同じような語呂合わせによる魔よけの風習は各地に見られ、伝染病の神とされる存在に家の名を知らせて難を逃れようとする話が、東北や関東などにも伝わっている。
原典より
すると大阪市内の頭のよい男がさっそく「久松留守(ひさまつるす)」の貼札を掲げたという。—— 現代の迷信(今野圓輔・現代教養文庫・1961年(昭和36年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代の迷信(今野圓輔・現代教養文庫・1961年(昭和36年))
『現代の迷信』は、今野圓輔が昭和三十六年に著した、現代の俗信を一般の読者に向けて説いた読み物である。昭和三十年代の新聞・雑誌の報道や聞き書きを主な材料に、縁起かつぎ、前兆・占い・禁忌・まじない・願掛け、憑きもの落としの殺人や新興宗教の騒ぎまでを全国から拾い集めている。「現状」「過誤と真実」「その背景」「迷信論」の四部から成り、巻末に読者の問いに答える迷信身の上相談を付ける。