厩尻の護岸に埋められた巡礼の娘
どんな伝承か
北上川が盛岡市の南まで来て、雫石川、中津川と三川合わさる所に、杉土堤という堅固な護岸堤がある。この辺りは昔南部家の厩があったので厩尻とも呼ぶ。毎年洪水に破られるので、三百年ばかり前に殿様の命で永久の護岸工事が始まったが、どんな大石を埋めても効かぬ箇所があった。山伏に問うと、酉の年月日刻に生まれた処女の人柱がいるという。該当したのは名主佐藤某の一人娘小糸であったが、宿を乞うた巡礼の娘が同じ生まれと分かり、名主はその娘を川底に埋めた。母も身を投げたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
農民俚譚(佐々木喜善(著)・本山桂川(編)・佐々木喜善・東北民俗・1934年(昭和9年))
『農民俚譚』は、佐々木喜善が書きためた昔話や伝説を、その没後に本山桂川が編んで昭和九年に刊行した本である。陸中の和賀郡・岩手郡・胆沢郡で集めた炭焼長者や瘤取爺などの昔話に、河童・山男・山女・人柱・蛇にまつわる伝説、地蔵の話、異類に嫁ぐ女の話を記した「縁女綺聞」、紫波郡の口碑による「鳥蟲木石伝」などを収める。郡ごとの昔話には大正十三年の日付の前書きが付き、巻末に本山桂川の追想「佐佐木喜善君の遺業と其晩年」を置く。