馬と契り天へ去った娘お小夜
どんな伝承か
著者の土地の巫女婆様が語るオシラ神の由来譚では、娘の名をお小夜といった。貧しい百姓の家に母を亡くした娘が父と二人で暮らし、遊び相手は厩に飼う一頭の葦毛の駒だけであった。娘が十六になったころ、駒は娘に懸想し、娘も夜ごと父の寝入りを見計らって厩へ通うようになった。それを知った父は激しく怒り、娘の知らぬ間に駒を裏の桑の木林へ引き出して高枝に吊るし、縊り殺してしまう。皮を剝いでいるところへ娘が来て、赤裸の死馬の首に縋りつくと、駒は娘を抱いたまま天空遥かに飛び去ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
農民俚譚(佐々木喜善(著)・本山桂川(編)・佐々木喜善・東北民俗・1934年(昭和9年))
『農民俚譚』は、佐々木喜善が書きためた昔話や伝説を、その没後に本山桂川が編んで昭和九年に刊行した本である。陸中の和賀郡・岩手郡・胆沢郡で集めた炭焼長者や瘤取爺などの昔話に、河童・山男・山女・人柱・蛇にまつわる伝説、地蔵の話、異類に嫁ぐ女の話を記した「縁女綺聞」、紫波郡の口碑による「鳥蟲木石伝」などを収める。郡ごとの昔話には大正十三年の日付の前書きが付き、巻末に本山桂川の追想「佐佐木喜善君の遺業と其晩年」を置く。