新庄村の妻女を夜ごと悩ます足音
どんな伝承か
盛岡市外の新庄村の農家の妻は三十歳で、子が三、四人あった。その年の正月頃から、毎夜一時頃になると正体の分からないものが寝床の周りや布団の上を小刻みな足で歩き回り、ついには懐に入り込む。隣の夫を起こしても夫には何も見えない。眠ろうとすると手足をつついて起こすので食欲も落ちた。易者や巫女には飯綱だとも古布団のせいだとも言われ、古着を売っても止まなかったが、老婆を頼んで夜番に念仏を唱えさせると眠れるようになったという。
原典より
此女の臥床の周囲や布団の上を、小刻みな足で歩き廻つた上、遂には懐などに這入るので—— 佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。