呼べば出た蟹ココウ次郎の甲羅
どんな伝承か
昔、或る所に爺と婆があった。爺は池に棲む蟹に毎日握飯をやり、ココウ次郎と呼んで可愛がっていた。或る日、婆は爺の留守に蟹を食べようと思い、握飯をこしらえて池のふちでココウ次郎と呼んだ。蟹が大勢出て来たので、婆は残らず網で掬って食べてしまい、甲羅は爺に知れないよう垣根の向こうへ捨てた。帰った爺が握飯を作らせて池で何度呼んでも蟹は出て来ない。毎日呼び続けていた或る日、樹の枝の鳥が、かあらは垣根、身は婆と鳴いたので、爺が垣根の所へ行くと蟹の甲羅が散らばっていた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。