厚楽家のくすぐる座敷
どんな伝承か
土淵村字田尻の厚楽という家は、昔はかなり有福な家であった。海岸へ行く馬継場になっていたので毎夜多くの泊まり客があったが、誰一人その奥座敷に寝られる者がなかったという。或る夜、浜辺の客人でがま伊勢という者が、そんなことがあるものかと言ってその座敷に寝た。すると夜半頃、懐に手を入れられて大いにくすぐられる。させまいと起き上がって襟を掻き合わせると、今度は袖口から手を入れてくすぐる。どうにも堪らず、鶏の啼く頃には他の座敷へ逃げ出したという。家の主は悪い畳でもあるものかと言うが、これもザシキワラシに違いないと記される。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。