市川老女が見た座敷童子
どんな伝承か
遠野町の市川某という当年八十五歳になる老女の話である。この人が十六歳の頃、まだ青笹村字中下の生家にいた時にザシキワラシを見た。ちょうど秋の稲こきの時で、家では朝から取り込んでいたため、皆の後で朝飯にしようと独り座敷にいると、縁側の戸袋のほうからひょっこりと一人の童が飛び出し、たちまちどこかへ姿を隠した。髪は黒く長く切り下げ、顔は赤く、素足のようであったという。丈は三つ位の小児ほどで、一見可愛らしくも見えたそうである。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。