大工の二階に通う小さな童子
どんな伝承か
遠野の大工町の佐々木某の家は代々の大工職である。その家の息子で二十七、八歳の若者がある時、二階の仕事場で働いていると、色の黒っぽい二つ位と見える子供のようなものが、どこからともなく出て来て、ちょこちょことその辺を歩き廻った。静かにして見ていると、その物はしばらく遊んでから乾しておいた板の間に入って行った。それから若者が二階にいる時は毎度出て来て遊ぶので、菓子などをやるようになると平気で取って食い、遊び倦きれば例の板の間に入って行くという。夜に猫が窓の外から覗くと、その物はふうふうと声を立てて叱り退けたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。