木仏と黄金仏の相撲
どんな伝承か
長者に奉公する貧しい下男は、山で仏の形をした木の切れ端を見つけて持ち帰り、寝間に置いて毎日三度の膳を供えて拝んでいた。下男を手放したくない長者は、木仏と黄金仏に相撲を取らせ、木仏が負ければ一生奉公、黄金仏が負ければ身代をすべて譲ると誓いを立てた。逃げようとする下男に、木仏は心配いらぬと言った。広間で長者が団扇を振ると二体は動き出して長く組み合い、やがて黄金仏は汗を流して倒れた。木仏は黄金仏を押し出して仏間の棚に座り、長者は黄金仏を抱いて家を追われ、下男が長者となった。乞食に落ちた長者が嘆くと、黄金仏は、毎日供え物と強い信心を受ける木仏に、年に数度の供え物の自分が勝てるはずがないと答えたという。
原典より
すると不思議にも二つの像はぐらぐらと動き出して、だんだんと近寄り体を絡み合はせ、押しつ押されつ、挑み挑まれ二時(ふたとき)にも渉つて相撲を取り結んで居た。—— 佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。