竜宮の若殿になった夢見息子
どんな伝承か
わがままを許された一人息子が、毎夜裏の梨の木に来る天狗を斬ると言って母に刀を買わせた。ある夜、斬りかかると天狗は息子の鬢をつかんで空を運び、海の上で放した。海の底へ沈んだ息子が気づくと明るい野原にいて、たどり着いた館では人々が泣いていた。ここは竜宮という国で、殿様の娘が今夜鎮守の生神に人身御供に出されるという。息子は日本から来たと名乗って身代わりになり、現れた猿の経立を斬り、続く二匹の化物も退治した。殿様の婿となり若殿として栄えたが、母を迎えに姫と駕籠で日本へ向かう途中、頭を叩かれて目を覚ますと、母が早く起きて飯を食えと怒鳴っていた。すべて夢だったという。
原典より
そこで息子は、汝何をするツと言って、跳上って化物の気無しな所をザッキリと眉間に斬りつけた。—— 佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。