黄金の弾で仕留めた猿の経立
どんな伝承か
上郷村字細越の狩人鶴が、ある時狩山に行って泊まっていると、近くの大きな樹から光が射し、その側で一人の女が糸車で糸を紡いでいた。狐か狸の仕業と思って鉄砲で撃ったが、女はけたけたと笑うばかりで動かない。翌朝、父にその話をすると、そうした物には普通の鉄の丸では当たらぬ、五月節句の蓬と菖蒲に包んで込め、筒穴に草葉を詰めて撃てばよい、それでも平気なら黄金の丸で撃つほかないと教えられた。その夜、教えの通りに撃ってもなお笑うので、先祖伝来の黄金の弾を込めて狙いを定めて撃つと、女はぎゃっと叫んで光も消えた。翌朝、血をたどって行くと岩窟の中に見たこともない怪獣が斃れており、父は猿の経立とはこれのことだと言った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
佐々木喜善全集 1(佐々木喜善・佐々木喜善全集・1986年(昭和61年))
『佐々木喜善全集 1』は、佐々木喜善の著作を遠野市立博物館が編集・発行し、昭和六十一年に刊行した全集の第一巻である。岩手県の遠野・江刺・紫波・岩手などで聞き集めたザシキワラシの話、昔話、伝説を、村の古老や知友からの聞き書きと手紙による報告をもとに収める。「奥州のザシキワラシの話」「江刺郡昔話」「紫波郡昔話」「東奥異聞」「老媼夜譚」「聴耳草紙」に小篇を加えて並べ、巻末に遠野市教育長の跋と奥付を置く。