六角牛の鹿笛と猿の経立
どんな伝承か
栃内村の林崎に住む何某という男は、今は五十に近い。十年あまり前のことである。六角牛山に鹿を撃ちに行き、オキを吹いたところ、猿の経立がいて、これを真の鹿だと思ったのか、地竹を手で分けながら大きな口を開けて嶺の方から下って来た。胆が潰れて笛を吹き止めると、やがて逸れて谷の方へ走り去ったという。オキとは鹿笛のことである。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。